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特別な三重対角行列の固有値 (厳密解)

$n$ 次の三重対角行列$$\begin{pmatrix}a & b & 0 & \ldots & 0\\ b & a & b & \ddots & \vdots\\ 0 & b & a & \ddots & 0\\ \vdots & \ddots & \ddots & \ddots & b\\ 0 & \ldots & 0 & b & a\end{pmatrix}$$の固有値を求めます。

$2$ 次や $3$ 次など、具体的な次数の行列なら、素直に固有方程式を解けば固有値が求まります。しかし、今回の場合は $n$ 次という任意次数の行列なので、このような正攻法が使えません。(「$5$ 次以上の代数方程式は代数的に解けない」という有名な結果があります。) そこで、解答にはややテクニカルな方法を使うことになります。

[ Step 1 : 問題の簡単化 ]

上の行列 $A$ の固有値を $\lambda$ とすると、$\lambda$ は方程式 ($A$ の固有方程式)$$\begin{vmatrix}a-\lambda & b & 0 & \ldots & 0\\ b & a-\lambda & b & \ddots & \vdots\\ 0 & b & a-\lambda & \ddots & 0\\ \vdots & \ddots & \ddots & \ddots & b\\ 0 & \ldots & 0 & b & a-\lambda\end{vmatrix}=0$$の解になります。

この式で $a-\lambda$ を一まとまりとみると、次の行列$$A' = \begin{pmatrix}0 & b & 0 & \ldots & 0\\ b & 0 & b & \ddots & \vdots\\ 0 & b & 0 & \ddots & 0\\ \vdots & \ddots & \ddots & \ddots & b\\ 0 & \ldots & 0 & b & 0\end{pmatrix}$$の固有値が $\lambda-a$ だということもできます。

さらに、$A'$ を $b$ で割った行列を$$A'' = \begin{pmatrix}0 & 1 & 0 & \ldots & 0\\ 1 & 0 & 1 & \ddots & \vdots\\ 0 & 1 & 0 & \ddots & 0\\ \vdots & \ddots & \ddots & \ddots & 1\\ 0 & \ldots & 0 & 1 & 0\end{pmatrix}$$とすると、$A'$ の固有値は $A''$ の固有値の $b$ 倍に等しくなります。

結局、$A$ の固有値を求める問題は、$A''$ の固有値を求める問題に帰着されました。なお、$A$ の固有値を $\lambda$、$A''$ の固有値を $\mu$ とすると、$\lambda$ と $\mu$ の関係は$$b\ \mu = \lambda-a$$となります。

[ Step 2 : 固有ベクトル成分の漸化式 ]

$A'$ の固有値 $\mu$ に属する固有ベクトルを $^t(v_1, v_2, \ldots, v_n)$ とすると、固有値、固有ベクトルの定義から$$\begin{pmatrix}0 & 1 & 0 & \ldots & 0\\ 1 & 0 & 1 & \ddots & \vdots\\ 0 & 1 & 0 & \ddots & 0\\ \vdots & \ddots & \ddots & \ddots & 1\\ 0 & \ldots & 0 & 1 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}v_1\\v_2\\v_3\\\vdots\\v_n\end{pmatrix}=\mu\begin{pmatrix}v_1\\v_2\\v_3\\\vdots\\v_n\end{pmatrix}$$が成り立ちます。

この式から、固有ベクトルの成分に関する $3$ 項間漸化式$$\begin{eqnarray*}v_2 &=& \mu \ v_1,\\
v_{j-1} + v_{j+1} &=& \mu \ v_j \ \ \ (j=2,3,\ldots,n-1),\\
v_{n-1} &=& \mu \ v_n\end{eqnarray*}$$が導かれます。

ここで $v_0 := v_{n+1} := 0$ と定義しておくと、上式は一本にまとめられて$$v_{j-1} + v_{j+1} = \mu v_j \ \ \ (j=1,2,\ldots,n)\tag{*}$$となります。

[ Step 3 : 固有ベクトルの決定 ]

$v_j$ が$$v_j = \alpha \ \rm{e}^{ij\theta} + \beta \ \rm{e}^{-ij\theta}$$と書けると仮定します。ここで $i$ は虚数単位です。(どうやってこれを思いついたのかのはわかりませんが、実際これでうまくいきます。)

これに $j = 0, n+1$ を代入して、$v_0 = v_{n+1} = 0$ を用いると
$$v_0 = \alpha + \beta = 0,$$ $$v_{n+1} = \alpha \ \rm{e}^{i(n+1)\theta} + \beta \ \rm{e}^{-i(n+1)\theta} = 0$$
となり、整理すると$$2\alpha \sin( (n+1)\theta ) = 0.$$よって$$\alpha = 0 \ \text{または} \sin( (n+1)\theta ) = 0$$という条件が導かれます。

・$\alpha=0$ のとき
$\alpha + \beta = 0$ より $\beta = 0.$ ゆえに $v_j = 0\ \ (j = 1, 2, ..., n)$ となってしまうので不適。

・$\sin((n+1)\theta) = 0$ のとき
$$(n+1)\theta = m\pi.$$よって$$\theta = \frac{m\pi}{n+1} \ \text{($m$ は整数)}.$$
以上より$$\begin{eqnarray*}v_j
&=& \alpha\ \rm{e}^{ij\theta} + \beta\ \rm{e}^{-ij\theta}\\
&=& \alpha\ \rm{e}^{ij\theta} - \alpha\ \rm{e}^{-ij\theta}\\
&=& 2\alpha \sin( j\ \theta )\\
&=& 2\alpha \sin\left( \frac{j\ m\pi}{n+1} \right)\ \ \ \text{($m$ は整数)}.\tag{#}\end{eqnarray*}$$
[ Step 4 : 固有値の決定 ]

(*) 式に (#) 式を代入して $2\alpha$ で除すと$$\sin\left( \frac{(j-1)\ m\pi}{n+1} \right) + \sin\left( \frac{(j+1)\ m\pi}{n+1} \right) = \mu \sin\left( \frac{j\ m\pi}{n+1} \right).$$左辺を加法定理でばらして整理すると$$\mu = 2 \cos\left( \frac{m\pi}{n+1} \right).$$
ゆえに、求めたかった固有値 $\lambda$ は$$\lambda = a + 2b \cos\left( \frac{m\pi}{n+1} \right)\ \ \ \text{($m$ は整数)}$$となります。

$\lambda$ は $m$ の値によって変わりますが、$\cos$ が周期関数なので $\lambda$ は $n$ 種類の値のみをとり得ます。

固有値に三角関数が現れるなんて不思議ですね。

2010/10/20 : 細部を微修正。
2011/10/24 : さらに微修正。意外にも読んでくれている人がいるようで、ありがたいことです。公開している甲斐があります。
2013/12/23 : MathJax 導入に伴い、数式を書き直し。
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No title

Step2 の行列の固有ベクトルを対角化するところですが、
ここで出てくる行列は、物性物理の分野では良くしられていて
1次元Nサイトのtight-bindingハミルトニアンとまったく同じ形をしています。
ここで求めている解は、上のハミルトニアンを周期的境界条件で求めておいてからその解の中からディリクレ境界条件に合うものを探してくる事で求める事が出来ます。
周期的境界条件の場合はBlochの定理(数学ではFloquetの定理だったかな?)によって、解の形にexp(ikx)と言った形が出てくるのが極めて自然に導かれます。最終的な解がsinで出てくるのはディリクレ境界条件のためです。

物理の言葉で説明した所がありましたので、もしかしたら意味が通じませんかもしれませんが、もし興味が有ればこれらのキーワードを元に調べて頂ければ理解が深まるかもしれません。

Re: No title

返信が遅れてしまいましたが、コメントありがとうございました。
おもしろそうなので、今度調べてみようと思います。
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